なぜ、編み物好きはツイードに惹かれるのか

なぜ、編み物好きはツイードに惹かれるのか

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なぜ、編み物好きはツイードに惹かれるのか

毛糸売り場でツイードを見つけると、なぜか手に取ってしまう。

ベースの色の中に、小さな別の色がぽつぽつと混ざっている。 それだけのことなのに、編み地になると普通の無地とはまったく違って見えます。

ツイードの魅力は、ただ「ネップが入っている」というだけではありません。

シンプルに編んだとき。近くで編み地を眺めたとき。 何十段もメリヤス編みを続けているとき。 そして、出来上がった一着を身につけたとき。

なぜツイードは、こんなにも編み手を惹きつけるのでしょう。

今回は、ツイードという毛糸そのものの面白さを、 編み手の目線から紐解いてみます。

ツイードは、「一色」ではありません

一見すると、グレー、ベージュ、ネイビー、ブラウン。 けれど近くで見ると、その中には白や黒、赤、黄、青など、 ベースとは違う小さな色が潜んでいます。

ツイードらしい表情をつくる代表的な存在が「ネップ」です。 小さな繊維のかたまりや色の粒が糸の中に入ることで、 一色でありながら一色ではない、複雑な見え方が生まれます。

Donegal Yarnsでは、伝統的なツイード効果を持つ糸を、 複数色の小さな斑点が入った糸として説明しています。 Rowanでも、小さなネップがツイード独特の表情を生み出す要素として紹介されています。

遠くからは一色に見えても、近づくといくつもの色が見えてくる。 これがツイードの面白さの入口です。
遠目には静か
近くで見るほど、色がある

シンプルに編むほど、糸がよく見える

ツイードで何を編むかと考えたとき、 必ずしも複雑な模様を選ぶ必要はありません。

むしろ、メリヤス編みのようなシンプルな編み地にしてみると、 一目一目は同じなのに、ところどころに現れるネップによって、 平らな一色とは違う奥行きが生まれます。

「シンプルなセーターを編みたい。でも、普通の無地では少し物足りない。」

そんなとき、編み方を難しくする代わりに、 糸そのものに表情を持たせる。 ツイードは、そんな選び方ができる毛糸です。

「簡単に編める」と
「簡単に見える」は、違います
複雑な技法を加えなくても、 ネップが編み地に小さな変化をつくります。
ここが、ツイードを選ぶ大きな理由。 模様を増やして作品を複雑に見せるのではなく、 シンプルに編みながら、 糸そのものの色と質感を作品に生かすことができます。

編んでいる途中にも、小さな変化がある

ツイードの魅力は、完成した作品だけではありません。

何十段、何百段とメリヤス編みを続けているときにも、 「ここには白い粒」「次は茶色」「今度は少し明るい色」と、 手元に小さな変化が現れます。

段染め糸のように、大きく色が変化するわけではありません。

だから作品全体の印象は落ち着いたまま。 それでも編んでいる人の手元では、 同じ一色をただ編み続けるのとは少し違う時間があります。

完成した作品だけでなく、 編んでいる途中にもツイードらしい小さな発見があります。

縄編みとツイードは、本当に相性が悪い?

「ツイードは糸そのものに表情があるから、 模様編みには向かないのでは?」

そう思われることがあります。

もちろん、ネップが非常に大きかったり、 色のコントラストが強かったりすれば、 繊細な模様が見えにくくなることもあります。

けれど、ツイードだから縄編みが隠れてしまうとは限りません。

Rowanでは、ツイード糸を縄編みやレース模様にも使える糸として紹介しています。

またInterweaveでは、Atelier Zitronのタスマニアン ツイードを 大きな8目の縄編みに使用し、 立体的な編み地の動きと控えめなネップの両方が楽しめる例として紹介しています。

大切なのは、 「ツイードなら何でも同じ」と考えないこと。

ネップの大きさや色の強さによって、 模様の見え方は変わります。

タスマニアン ツイードのようにネップが控えめなタイプなら、 縄編みの陰影を残しながら、 編み地にもう一つの表情を加えることができます。

控えめなネップなら、 縄編みの立体感とツイードの色の粒を同時に楽しめます。

なぜツイードは、長いあいだ編み手に選ばれてきたのでしょう

ツイードは、ここ数年だけの流行から生まれた質感ではありません。

アイルランドのDonegalでは、 1800年代にはすでに家庭で羊毛を加工し、染め、紡ぎ、 編み物や織物に使っていた記録があります。

現在もDonegal Yarnsでは、 ネップや色の斑点を特徴とするツイード効果の糸が作られています。

Rowanでもツイードは、 素朴さと洗練をあわせ持つ、 長く使われてきた糸として位置づけられています。

一着のセーターを編むには、時間がかかります。

数週間、ときには数か月。

それだけの時間をかけるなら、 一年だけ着て終わるものより、 何年経っても手に取りたくなるものを編みたい。

ツイードの落ち着いた色と複雑な表情は、 強い流行をそのまま形にするのとは違う魅力を持っています。

それもまた、 編み物との相性がよい理由のひとつなのかもしれません。

そして今、ツイードは「ゴワゴワ」だけではありません

ツイードと聞くと、 少し粗く、硬く、しっかりしたウールを想像する方もいるでしょう。

その素朴な風合いこそ魅力の糸もあります。

一方で現在のツイードヤーンには、 昔ながらの色の表情を残しながら、 肌触りまで考えられたものがあります。

見た目

小さなネップが入り、 昔ながらのツイードらしい複雑な色と質感。

触れたとき

細いメリノなどを使うことで、 見た目から想像するより柔らかなものもあります。

ATELIER ZITRON

Tasmanian Tweed タスマニアン ツイード

今回、ツイードの魅力を改めて考えるきっかけになったのが、 Atelier Zitronの「Tasmanian Tweed タスマニアン ツイード」です。

95%メリノエクストラファインに5%ビスコース。

ツイードらしい控えめなネップを持ちながら、 糸そのものはとても柔らかな方向に作られています。

Interweaveでも、この糸は肌に触れるウェアに使いやすい柔らかさを持ち、 大きな縄編みでは編み地の動きと控えめなネップがよく生きる糸として紹介されています。

見た目はツイード。
触れてみると、想像していたツイードと少し違う。
素材:メリノエクストラファイン 95%、ビスコース 5%
重量:50g
長さ:106m
推奨編針:4〜4.5mm

メリヤス編みで、糸そのものの色を見せる。

大きな縄編みで、立体感とネップを重ねる。

ベストやカーディガンにして、 日常の一着として長く着る。

ツイードには 「この模様でなければ」という決まりはありません。

むしろシンプルに編んだときほど、 なぜその糸を選んだのかが、 作品の中に見えてくることがあります。

あなたなら、ツイードで何を編みますか?

シンプルなメリヤスのセーター。 立体的な縄編み。 ベストやカーディガン。

ツイードは、 難しいことをしなくても、 糸そのものが編み地の中に小さな色の変化と奥行きをつくってくれます。

単色なのに、単調ではない。

遠くから見たときと、 手元で見たときの表情が違う。

そして編んでいる途中にも、 小さな色が現れる。

それが、 長いあいだ多くの編み手がツイードに惹かれてきた理由のひとつなのではないでしょうか。

執筆者:北林 裕美子 (micono神戸元町本店)

参考資料

  • Interweave Editorial Team, 「Fiber Review: Rethinking Tweed」
  • Rowan, 「The Rowan Tweed Yarn Collection」
  • Donegal Yarns, 「Our History」「Made in Ireland」
  • Atelier Zitron, Tasmanian Tweed 製品情報
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