「これ、触ってもいいですか?」
神戸元町の「micono神戸元町本店」を訪れるお客様が、決まって足を止める場所があります。
店内にさりげなく飾っている、ひとつのショール。
特別な場所に置いているわけでも、大きく宣伝しているわけでもないのに、気づけばいつも誰かが手を伸ばしています。
先日は海外からいらしたお客様が、「この作品そのものを譲ってほしい」と熱心に仰るほどでした。
開店から2年。この店で一番「素敵」と言われ続けてきたショールを改めてご紹介します。
糸の力を最大限に引き出す、熟練の手仕事

このショールは、当店のベテランスタッフが既存の技法に独自のアレンジを加え、糸の表情を最も美しく見せられるよう心を込めて編み上げたものです。
細いレース糸を均一に、そして繊細な模様として成立させるには、相応の技術と集中力が必要です。スタッフがひと針ずつ丁寧に紡いだその時間は、作品の端正な佇まいとなって現れています。
ただ、この作品がこれほどまでに人を惹きつけるのは、技術の素晴らしさだけではありません。その根底には、この糸でなければ到達できない**「表現の深み」**があるのです。
どんなパターンも、ワンランク上の表情に

このショールに使っているのは、Manos del Uruguay(マノス・デル・ウルグアイ)の「Marina(マリーナ)」。南米ウルグアイの女性たちが一かせずつ染め上げた、シングルプライのレースヤーンです。
私たちがこの糸に全幅の信頼を置いている理由。それは、「どのようなショールパターンを選んでも、この糸で編むだけで作品が驚くほど表情豊かに、ワンランク上の仕上がりになる」という点にあります。
グレーがベージュへと溶け込み、ブラウンへと移ろっていく。手染めならではの「色の呼吸」が、編み進めるごとに模様に深みを与え、作品全体を立体的で上品な印象へと導いてくれます。
使い慣れたお気に入りのパターンも、あるいは新しく挑戦するデザインも。この糸を手に取るだけで、あなたの手仕事はもっと特別なものになるはずです。
編み物歴30年のプロが感じた、無心の時間
スタッフがこのショールを編んでいたとき、こんなことを話してくれました。
「色の移り変わりが本当に自然で、次はどんな色が出てくるんだろうとワクワクしながら針を動かしていました。800mという長い道のりも、この糸と一緒なら、編む時間そのものが豊かな冒険のようでした」
編み物歴30年以上の彼女をそこまで無心にさせたのは、糸が持つ確かな生命力だったのかもしれません。
待望の再入荷、ですが……
世界中に愛好家を持つマノス・デル・ウルグアイの糸は、一度在庫が切れると次の入荷まで時間がかかることでも知られています。
長らく品切れが続いていた「マリーナ」が、ようやく店に届きました。
ただ、今回入荷できたのは、わずか5かせだけ。
2年間ずっと気になっていた方も、今日初めてこの糸を知ってくださった方も。お手持ちの編み図や、これから編みたい作品を思い浮かべながら、どうぞお早めにこの「一期一会の色」を覗いてみてください。
※お知らせ
糸が非常に繊細なため、玉巻きをご希望の方はご注文後にメールでお知らせいただければ幸いです。
執筆者:北林 裕美子 (micono神戸元町本店)